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基本的にテキスト天国! 主にテキスト。時々画像。基本的にgdgdな世界。

『 とくん、と鳴る心臓 』
[No.722] 2010-01-16 Sat 23:05
両親が大きい方だから、背が伸びると思っていた。
そして、予想通り身長は計るたびに伸びていた。
この一年で随分と大きくなった。
だが、まだ届かないと愛理は思う。

舞美を見上げる、とまではいかないが、愛理は少しだけ上を向いて舞美を見る。
身長は伸びたが、まだ舞美の身長を超えてはいなかった。

今日の撮影は舞美と二人きりで、ずっと一緒にいる。
もちろん、二人きりといっても本当に二人きりなわけではない。
周りにはカメラマンもいるし、スタッフだっている。
けれど、愛理の一番近くにいるのは舞美で、視線を固定すれば舞美しか見えない。
少し上を向いて、舞美を見ているとまるで二人きりのような気がする。

カメラマンの指示に従って、舞美が近づく。
肌が触れる。
距離が近くなって、息遣いさえ感じられる。

愛理の心臓がとくんと小さな音を立てる。
舞美に触れている部分が強ばる。
自然に笑えているのか気になった。

舞美に気づかれないように深呼吸をする。
息を吸って、吐く。
そんな単純なことがやけに難しかった。

心臓はまだどくどくと脈打っている。
心臓を止めることは出来ないし、止まっても困る。
それでも、心臓の音が気になって、愛理は心臓が止まればいいと思う。

心臓の音よりもシャッターの音の方が遙かに大きいのだから、聞こえるはずがない。
周りにいるスタッフも大きな声で打ち合わせをしている。
愛理の周りは音で溢れていて、心臓の音が舞美に聞こえるわけがなかった。

周囲の状況を整理して、落ち着こうとする。
しかし、心臓はどくどくとうるさいままだった。
百メートルを走ったあとだって、こんなに心臓がうるさかったことはない。

愛理は努めて冷静に振る舞おうとする。
カメラに向かってにこりと笑う。
いつもと同じように笑えている自信はなかった。

いつの頃からか、舞美といると落ち着かなくなった。
距離が近ければ近いほど落ち着かない。
それは、舞美に知られてはいけないことだと愛理は知っている。

静まれ。

心臓に念じて、カメラを見る。
そして、舞美を見る。
やはり少しだけ上を見ることになる。

小さい方がいいのかな。
それとも、大きくなった方がいいのかな。

どうでもいい、くだらないことが気になった。
きっと舞美にとっては、どうでもいいことに違いないから、考えても仕方がないことだ。
それでも、そんな馬鹿らしいことが気になった。

身長がまだ伸び続けるのか、もう止まるのかわからない。
愛理はカメラの方へ向いた舞美を見続ける。

抱きしめたいのか、抱きしめられたいのかもわからない。

このまま時が止まって、身長も止まって、思考も止まって、心臓すら止まって、何もかもが止まってしまえば良いと思う。
何も考えないことが一番良い。
答えを出してしまうのは少し怖くて、愛理はそんなことを考えた。

END

---   ---   ---

ワニ(でしたっけ?)から届いたUTBについているというDVD。
私は頼んでいなかったわけですがっ!
んがっ!
キャプチャされた画像を見ました。
ショートの舞美が可愛い!
愛理も可愛い。
なにこれ見たい!
と、なりました。
いや、でも見られないんですがw
見られない結果、勢い余ってやじすずが出来上がりました。
画像だけで、DVD見ていないので、こんなのでいいのか知りませんが、こんなのだったら嬉しい。
私が!w
そんなわけで、やじすずっていうか、すずやじっていうか、どっちでもいいっていうかw
まあ、そんな物体です。
こういうの、ももみやで見たいなー、と思ったんですが、ももみやでやったら、というか、桃子が絡んだら、絶対にあざとくなると思うので、やじすずみたいな感じにはならないですよねw
ベリなら、りしゃみやがいい雰囲気になりそうです。
見てみたい!
もちろん、あざとくてもいいので、ももみやも見たいですけどw
しかし、ベリにはこういう仕事が来ないような気がします。
こういうのが来るのは℃だよなーと思いますw

書き忘れていましたが、飼育更新しました。
夢の「おしゃべりうさぎ」を更新。
ほんのちょっとだけペースをあげてみました。

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やじももかももやじか、なんかそういうの
[No.695] 2009-12-13 Sun 08:20
「あれ?ももじゃん」

事務所近くのコンビニで、平積みしてある雑誌を手に取った瞬間、声をかけられた。
顔を上げると視線の先には舞美がいて、桃子が手に取った雑誌を不思議そうな顔で見ていた。

「ジャンプ?」
「うん」
「ももの?」
「ううん。弟に頼まれた」
「うちもお兄ちゃんが読んでる」

そんなことを言いながら、舞美が少し離れて、おしゃれな女の子が表紙になっているファッション雑誌を手に取った。
くるりとひっくり返して、裏表紙を確かめるとまた桃子に近づいてくる。

「今日の仕事、終わった?」

問いかけられて、桃子は小さく頷く。

「うん。そっちは?」
「終わった。これ買って、帰るところ」

舞美が手にした雑誌を桃子に見せる。

ジャンプとファッション雑誌。

同じ雑誌でも随分違うなあと思って、桃子も舞美が持っている雑誌を手に取ってみた。
表紙の女の子が着ている服が自分の着ている服とかなり違って、桃子は眉間に皺を寄せた。
買おうか、どうしようか。
ほんの少し迷ってから、雑誌をもとあった場所へと戻した。

「もも、他になんか買う?」
「これだけ」
「あたしも。これ買ったら、一緒に駅まで行かない?」
「行く、行く」

舞美と一緒にレジへ並んで、会計を済ませる。
本を袋へ入れてもらって、二人で外へ出た。
並んで歩くと、舞美の歩調が少し緩んだ。

思ったよりも仕事が早く終わったから、太陽はまだ高い位置にあった。
陽の光を遮る雲はないけれど、時々吹く風が冷たくて身体がぶるると震えた。
暖かいコンビニから出てきたばかりだから、寒さが身に染みる。
いつもは背筋をぴんと伸ばして歩く桃子だが、さすがに背中が丸まった。

「こういう寒い日は、なんか温かいもの食べたいなあ」

桃子は、はあ、と白い息を吐き出しながら、吐き出した息よりも白い湯気を立てるような温かい食べ物を想像する。
隣では舞美も背中を丸めて、白い息を吐き出していた。
手が冷たいのか、舞美が両手を擦り合わせて、桃子を見た。

「鍋とか?」
「あー、いいねえ」
「温泉とかもいいかもよ」
「それ、食べ物じゃないじゃん」
「あったまるじゃん」
「そーだけどさー」
「いいの、いいの。大体あってるから」
「あってないって」
「あったかい繋がり」

舞美が無責任に言って、はああ、と大袈裟に息を吐き出した。
吐き出された息は白く染まって、けれど、すぐに周りの空気に溶け込み、街に消える。
そして、新しく吐き出された息がまた辺りをほんの少しだけ白くした。

「あ、そうだ。温泉と言えば、覚えてる?」

街を少しだけ白く染めて、舞美が言った。

「なにを?」
「泡風呂」
「へ?」

間の抜けた声が出る。
舞美が突拍子もないことを言い出すのは、そう珍しいことではない。
けれど、泡風呂という単語から何かを思い出せというのは難しい問題だ。

「ほら昔、泡風呂一緒に入ったじゃん」
「そうだっけ?」
「キッズの頃に。覚えてない?」

桃子は首を横に振る。
埋もれた記憶は、簡単なことでは掘り起こせそうになかった。
何年も前の、しかも子供時代の話など、埋もれたまま出てこない記憶すらあるというのに、単語一つで全てを思い出すことは難しい。

「キッズの頃のコンサートで、ももが泡風呂の液体持ってきてお風呂に入れたら、もっこもこになったじゃん。それで一緒にお風呂入ったの。ほら、思い出してよー」
「温泉じゃないじゃん」
「そうだけど。思い出して」

思い出せと言うように、ぽんぽんぽん、と肩を叩かれる。
桃子は遠い記憶を探っていく。

キッズの頃、いくつものコンサートに出演した。
その中の一つのコンサート、いや、二つかもしれないし、三つかもしれない。
泡風呂用の液体を持って行った記憶が見つかる。
その記憶の中の桃子は、確かに舞美と一緒に湯船に泡が立つ様子を眺めていた。
そして、二人で一緒にお風呂へ入って、泡だらけになったような気がする。

二人ともあの頃は、今よりも細くて小さな子供だったから、一つの湯船に二人で入ることも簡単だった。
今は、当時から比べると体つきも随分と変わった。
二人で湯船に入れば、狭くて仕方がないだろう。

「思い出した。あの頃と比べると舞美、すっごくかわっ……」

懐かしいなどと思いながら、桃子は舞美を見た。
視線があるところで止まる。
桃子はくすりと笑って、言葉を続けた。

「ってなかった」
「え?」

舞美がきょとんとした顔をした。
まじまじと桃子を見て、すぐに桃子の視線がどこにあるのか気がついて、胸を押さえた。

「ちょっと、ももっ!どこ見てんのっ」
「あはは、ごめん。変わってないなーって、思って」
「ひどい。ちょっと、それ、ひどくない?」
「だって、成長してないじゃん」
「もも。ちょっと、ひどい。これでも、脱いだらすごいんだから」
「うそだー」
「見る?」

そう言って、舞美が桃子を覗き込んだ。
顔が近づいてきて、桃子は思わず仰け反る。

「見るって?」

丸まった背中を反らして、問い返す。
けれど、舞美は桃子の言葉というよりは、自分の言葉に答えを返した。

「あー、うちのお風呂狭いから無理」
「誰も舞美の家のお風呂に入るなんて、言ってないじゃん」
「そーだけどさー。あれだよね。子供の頃と違うから、お風呂って一人だよね」
「まあね」

舞美に言われて、改めて気がつく。
子供の頃は、ホテルのお風呂に誰かと一緒に入るなど当たり前だったのに、いつの間にか一緒に入らなくなった。
顔つきや体つきが大人になるにしたがって、昔のように誰かと一緒にお風呂に入るということがなくなった。

桃子は舞美を見る。
舞美はあの頃と比べると、かなり変わった。
子供の頃は、やんちゃな感じがするような元気の良さが前面に出た顔をしていたが、今は違う。
昔より落ち着いて、大人っぽくなった。
そして、綺麗になった。

しかし、桃子の方はあまり変わらない。
いや、桃子なりに変わってはいるが、舞美ほど劇的に変わったわけではない。
少しだけ大人っぽい顔つきになったような気がするが、まだまだ学生服が似合うような顔をしている。
下手をすれば、中学生に間違われても不思議はない。
こうして舞美と一緒に歩いていても、同い年には絶対に見えないだろう。

少し会わない間に、舞美だけがどんどん大人になっていくような気がする。
今日も久しぶりに会った舞美は、見慣れなかった短く切った髪がいつの間にか馴染んでいて、桃子よりも年上のように見えた。

「温泉とかさー。一緒に行きたくない?」

脱いだらすごいところを見たいわけではないが、たまには二人でゆっくりするのもいいような気がする。
最近忙しくて、舞美とゆっくりと出かけた記憶がないし、会ってもいない。

「もも、年寄りくさい」
「えー、でもいいじゃん」
「そうだなー。じゃあ、今度行こうか」
「今度っていつ?」
「休みの日」
「泊まりで?」
「そうそう。ももと二人で」

ばん、と桃子の肩を叩いて、とても大人っぽくなった舞美が昔と変わらない笑顔で言った。
あの頃とは変わったことも多いけれど、変わっていないこともたくさんあった。

舞美は相変わらず、少しとぼけているし、優しい。
歩幅が随分違ってしまったけれど、桃子に合わせて歩いてくれる。
お互い仕事が忙しくなって会う時間は減ったけれど、会えば昔と変わらないお喋りが出来る。

泊まりがけで温泉なんて、いつ実現出来るかわからないけれど、実現すればいい。
身長も体重も全部が変わってしまって、ユニットも別れて、それでも変わらない舞美と、これから先もずっと一緒にいられたらいいなと桃子は思った。

END

---   ---   ---

泡風呂のお話。
こんなことがあったら楽しい。私がw
イメージ的には、今よりもうちょっと寒い時期で。
というか、ちょっと前までは今ぐらいの時期からもうめっちゃ寒かったような気がする。
温暖化とか言うヤツなんですかね。
しかし、昔からずっとあった狼の不仲説は何だったんでしょうねw
噂なんか関係なく、本人達は小さい頃からとても仲良しみたいでした。
もっと、早くにこういう話をしてくれたら良かったのに!w

さて、私はこれから仕事に行ってきます。
まるでもう月曜日のような気分!つД`)

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『 小指タッチ 2 』
[No.682] 2009-11-26 Thu 00:39
ぱちんぱちんと響く音に、もうすぐコンサートが始まるのだと当たり前のことを桃子は思う。
周りにいるメンバーと手を合わせ、小さく息を吐き出す。
何度も経験しているにも関わらず、未だにコンサート前は緊張する。
けれど、それはみんなも同じなのだろう。
手を合わせる時に見る顔は、薄暗い中でもわかるほどにいつもとは違っている。

いち、にい、さん。

手を合わせたメンバーの数を数えかけて、すぐ横にいる雅に気がつく。
どちらからともなく手を合わせる。
そして、何となく小指を立てた。
特に意味はなかったけれど、雅も小指を立てたからこつんと小指と小指を合わせた。

躊躇うことなく合わされた小指に笑みが漏れる。
くすくすと桃子が笑うと雅も笑ったから、少し嬉しくなった。

ステージの上だったら、こうはいかない。
小指と小指を合わせようとしても、雅は絶対に小指を立ててくれないだろう。
指を合わせたいとねだれば、冷ややかな目で見るだろうし、舌打ちなんかもおまけに付けてくれるかもしれない。
それだけでなく、冷たい言葉ももれなく付いてきそうだ。

雅は、他の人には絶対にしない対応を桃子にだけする。
だが、そういう接し方をしてくる雅も嫌いではない。
むしろ、他の人とは少し違う対応をしてくる雅を面白いと思う。
しかし、雅が何故他の人とは違う対応をしてくるのかは、未だにわからない。
冷たいだけでなく、他の人以上の優しさを感じる時もあるから尚更だ。

どうしてだろう。

雅と笑い合いながら考える。
けれど、雅のことはよくわからない。
この先もわかることはないのかもしれない。
それでも一つだけわかることがある。

明日もこうして小指を出したら、今日と同じようにこつんと小指を合わせてくれる。

たぶん、きっと合わせてくれるのではないかと思う。
確信はないけれど、そんな気がする。

会場に流れる音楽が変わって、想像はそこで途切れた。
本番が始まる。
雅へ向かっていた意識がステージへと向かう。
緊張が高まる。

いち、にい、さん。

音に合わせて数を数えて、桃子はステージへ飛び出す。
スポットライトに照らされて、緊張はどこかに消えていた。

END

--- --- ---
なんとなく 『 小指タッチ 』の桃子編。
さりげなくこっそりと起こるももみやはやっぱりイイ。

で、突然メロンの話w
『THE BLUE HEARTS "20th Anniversary" TRIBUTE』参加予定アーティストの中にメロン記念日の名前があってびっくりしました。
メロンは、さりげなくこっそりと仕事の幅が広がっている!
このアルバム欲しいなー。

↓拍手お返事↓
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『 小指タッチ 』
[No.680] 2009-11-24 Tue 00:59
ここまで来てしまうと、あとはもう覚悟を決めるしかない。
毎週のように行われるコンサート。
慣れているはずなのに、いつも緊張する。
それは誰もが同じようで、薄暗い中、そわそわした空気が漂っていた。

みや、と呼ばれて手を出す。
声だけで誰かわかる。
たとえわからなくても、とにかく手を出す。
もう癖のようなものだった。
ここまで来ると、余程のことがない限りメンバー全員揃っているから、確かめる必要はない。

雅は出された手を次々に叩いていく。
手を合わせるたびに、緊張が薄れる。

周りにいる人全員の手を叩いて、最後に残った一人は桃子だった。
手を出してぱちんと手を合わせると、今度は小指を出された。
桃子と目が合う。
躊躇うことなく小指を合わせると、桃子がくすくすと笑って、つられて笑った。

緊張から、完全に解き放たれることはない。
どこまでいっても、緊張は残る。
今も手が冷たい。
それでも桃子と小指を合わせると、いつもより緊張していないような気がした。

何故かは知らない。
普段ならしないようなことをしたからかもしれないし、そうじゃないかもしれない。

桃子とは、特別仲が良いというわけではなかった。
でも、一緒に出かけることが増えた。
最近は、隣にいることがとても自然なことのように感じる。
それが関係しているのかなと雅は思う。

桃子と笑い合いながら、考える。
最後に手を合わせる相手を明日も桃子にしてみようか。
今度は、こちらの方から小指を合わせてみよう。
そうしたら、桃子はどんな風に笑うだろう。

会場に流れる音楽が変わって、想像はそこで途切れた。
本番が始まる。
桃子の表情が変わる。
何故か胸の辺りが熱くなった。

何だろう、と思う前に出番が来る。
今、見たばかりの桃子の表情も、胸の熱さも消える。
雅はステージへ飛び出した。

END

--- --- ---
と、まあ、久しぶりにリアル寄りな感じで。
DVDマガ19(だっけ?)の小指タッチシーンから。
gifがペタペタ貼られていたので、妄想が広がりましたw

さて、今日は勤労感謝の日なのに働いていたわけですが……。

今日って勤労感謝の日だよね。

と誰かが言ったことにより、仕事がとても暗い感じで始まりましたw

一同<……はぁ

みんなため息ですw
とりあえず

勤労出来ることに感謝しながら働く日ですよ(´▽`)

と、言っておきましたw
いや、まあ、実際は感謝どころか呪いながら働いていたんですがw
でも、大丈夫。
みんなやる気がなくて、だらだらしてました。今日はw

↓拍手お返事↓
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『 つまらない夜 』
[No.595] 2009-08-16 Sun 10:02
「なんか、テンション低くない?」
「え?そんなに今日のもも、テンション低い?」
「そうじゃなくて」

雅の視線の先。
そこにあったのはテレビで、そのテレビには小田裕二が映っていた。

「小田裕二?」

桃子は久々に雅の部屋へ遊びに来ているのだが、さっきから雅はテレビに齧り付いていて、桃子の相手をしてくれない。
今、放送している世界陸上は二年に一度のお楽しみで、今年を逃せば来年は見ることが出来ない。
けれど、桃子だって仕事で忙しいから、今日を逃せば、しばらく雅の部屋へ遊びに来ることが出来ない。
二年に一度よりは短い期間だが、桃子にとってはとても長い時間だ。
どっちが大事かなんて聞くつもりはないが、どちらが大事かはわかっていて欲しかった。
それなのに雅は、テレビを見てばかりだから、桃子の口調は不機嫌なものになる。
だが、雅は桃子の機嫌よりも、小田裕二の機嫌の方が大事らしかった。

「うん。キター!って言わない」
「言わないね」
「前に見たとき、すっごいハイテンションだったのにさ、なんで今回こんなにテンション低いわけ?」
「そんなの、ももに聞かれてもわかんないよ」
「こんなの、小田裕二じゃないじゃん。つまんない」
「じゃあ、見るのやめる?」
「見る」

桃子を見たのは一瞬で、雅はすぐにテレビへ向き直る。
何故かテンションの低い司会にぶつぶつぐちぐちと文句を言いながらも、テレビの前から離れる気配がない。
普段はスポーツなど見もしないのに、今日はどういうわけか陸上競技に夢中だ。

「今、つまんないって言わなかったっけ?」
「うん。つまんない」
「つまんないけど見るんだ?」
「他に見たいものも、することもないし」

雅の部屋へ来てから数時間。
世界陸上が始まるまで、夕飯を食べたり、お風呂に入ったりで、のんびりする時間がなかった。
やっと二人でのんびり出来ると思ったら、今度はテレビばかり見ている。

「ねー、もう見るのやめたら?」

もう、我慢の限界だった。
このまま放っておかれて、ただ眠るだけなんてつまらない。

「なんで?」
「もも、つまんない。陸上、興味ないもん」
「じゃあ、100メートル見たらやめる」
「まだ予選じゃん。今すぐやめよーよ」
「せっかくだし、もうちょっと見たい」

雅の視線を独占しているテレビの中では、「いちについて、よーい!ドン」が繰り返されている。
あと何回繰り返せば100メートルという競技が終わってくれるのか、桃子にはさっぱりわからない。

まだかな、まだかな。

桃子の頭の中はそんな言葉で一杯になる。
だが、雅の頭の中は全く違うようで、「わー」とか「きゃー」とか、時々、「いっけー!」などという景気の良い声が聞こえてくる。
その声を聞いていると、桃子は今まで以上につまらなくなる。
桃子がこんなにもつまらない思いをしているのに、隣では雅がやけに楽しそうなのだから面白いはずがない。

「みやー、ねー、つまんなーい」

腕を振り上げて、きゃあきゃあ騒いでいる雅の背中にのし掛かる。
そして、テレビに夢中になっている雅を邪魔するように耳元で囁いた。

「テレビなんかより、ももともっと楽しいことしようよ」
「ももの楽しいことって、ろくなことじゃないからやだ」
「えー、楽しいって。みや、いっつも喜んでるじゃん」

桃子は背中へぴたりとくっついて、雅の腰へ手を回す。
脇腹をそろりと撫でて、Tシャツの裾をたくし上げる。
するりと手を滑らせて、下着の上から胸に触れた。

「ちょっ、ももっ」

雅が声を上げ、桃子の手を掴む。

「だめだって。テレビ、見てる」

ぎゅっと手を掴んで、雅が言った。
声色は普段とほとんど変わらない。
期待もなければ、色気もなかった。
聞きたいのはこんな声ではなくて、桃子は雅のうなじへ唇を押しつけた。
ちゅっ、と軽くキスをしてから、雅の肩へ顎を乗せる。

「テレビなんか見ないで、もものこと見てよ」
「ちょっと、待ってって」
「待ったら、してもいいの?」

雅に押さえつけられたままの指先を動かす。
爪が下着に食い込む。
さらに手の平を押しつける。

「……だめ」

聞こえてきた声は、少し震えているようだった。
言葉は桃子の行為を拒むようなものだったが、そうは聞こえない。
どちらかと言えば、誘っているような声だ。

「みやはテレビ見てていいよ。ももが勝手にするから」

耳元でそう言って、そのまま雅の耳に噛みつく。
軽く噛んで舌を這わせると、桃子の手を掴む雅の手から力が抜けた。
桃子はするりと雅の手の下から手を抜き取ると、肋骨の上を撫でつけた。

「もも、やめっ、…て」

雅の掠れた声に誘われるように、喉を撫でる。
うなじを舐めて、Tシャツを捲り上げ、背中を露出させた。
肩胛骨の上へ強く吸い付く。

「んっ」

聞こえてくる声は色付いていて、雅が抵抗するようには思えない。
桃子は雅の肩を引き寄せ、腰を抱く。
そして、胸を覆う布地と肌の間へ指を滑り込ませる。
そのまま下着を押し上げようとしたら、雅が急に大声を上げた。

「ああっ、パウエロ!」

意味不明な叫び声とともに、雅が頭を反らした。
何の呪文かは知らないが、その言葉が聞こえた直後に重たい音が頭に響いた。

ごつんっ。

音と同時に目の前に星が飛ぶ。

「いたっ!」

痛いと認識するよりも先に言葉になっていた。
桃子は雅の身体から手を離し、頭を抱える。

音と星の原因。
それは雅の後頭部だった。
雅が突然頭を反らしたせいで、雅の後頭部が桃子の額に当たったのだ。
ちかちかと瞬く星が目の前から消えてから雅を見ると、雅も同じように頭を抱えていた。

「みや、ちょっと。突然、頭、反らしたりしないでよ。それにパウエロってなに?」

雅の身体を解放した桃子は、のそのそと四つんばいになって床を這う。
痛みの残る頭で雅の隣へと移動すると、テレビを見た。
額を押さえながらもテレビを見た理由は一つ。
雅の視線の先、それがテレビだったからだ。

「あ、なんか、今の人、ゴールの近くでスピード落としてさ、三位危ない感じで。メダル候補なのに」
「ああ、テレビ?」
「うん」

桃子は決定的瞬間を見ていないが、テレビの中は大騒ぎだった。
今、放送している100メートル一次予選は、三位までに入らないと二次予選に進めないのだが、何が起こったのか優勝候補の一人が一次予選落ちしてしまいそうで騒いでいるらしい。
テレビの中では身体の大きな男の人を映して、解説者とアナウンサーが三位だとか、四位だとか言っている。
もちろんそれだけではなく、騒ぎの元となった人物の名前を連呼していて、どうやらそれが雅が叫んだ謎の呪文のようだった。
けれど、それは雅が叫んだ呪文とは違う。

「あのさ、パウエルじゃないの?」
「え?そうなの」
「解説の人、そう言ってる」
「あ、ほんとだ」

後頭部を押さえながら、雅が言った。
ついでに、乱れた服装も直している。

「みや、しないの?」

ムードは見事なまでに壊されていて、色気の欠片もない状態だったが、桃子は諦めきれず、雅の脇腹を突く。
だが、手は押し返され、素っ気ない声で言われた。

「しない。もうすぐウサタンボルトが出るんだから」
「みや、それウサインボルト……」
「もう、なんでもいいじゃん。もも、細かい」

人名なんだから、細かいも何もない。
それにさっきから、パウエルだとかボルトだとかテレビが連呼しているのだから、間違える雅の方がおかしいと桃子は思う。
そう言いたいが、雅は桃子の方を見もしない。
自分の方を見もしない恋人と話していることほど、空しいものはなかった。

「もう、寝る」
「おやすみ」

小さく呟いた言葉に、事務的な言葉が返ってくる。

「ちょっと、みや!」
「なに?」
「……引き止めてよぉ」

相手にされず空しい。
そうは思ったが、やはり雅にかまって欲しい。
だから、呟いた言葉は雅の気を引く為の言葉で、本気ではなかった。
それなのに、冷たく「おやすみ」などと言われて、桃子は情けない声を上げた。

隣にいる雅の肩を掴んで、下から顔を見上げる。
ねだるように「みやぁ」と名前を呼ぶと、くしゃくしゃと髪を撫でられた。

「一緒にみよ。ウサインボトル」

自信満々に、それはもう自分が間違っているなどと欠片も思っていない声で言われる。

「見るけど。見るけどさあ。でも、ボトルじゃなくてボルトだから」
「いいじゃん、細かいことは」
「いいけどさ、それ絶対人前で言わない方がいいよ。笑われるから」
「もも、笑ったら絶交」
「うわ、なにそれ。子供みたい」
「笑わないなら、隣にいてもいい」

雅が桃子の腕へ腕を絡めて、言った。
離れることが難しいぐらいに、雅が桃子の腕にしがみついていた。

「笑っても、隣にいるもん」

雅は相変わらずテレビを見ている。
けれど、腕はしっかりと繋がっていて、まあこれならいいかな、なんて思えた。


END
(注:小田裕二は世界陸上のあの人の漢字に置き換えて読んで下さい)
---   ---   ---

急に何なんだ、って話なんですが、世界陸上見つつ、ついったーしていたところ「三題噺」の話になって、その流れでこんなことになりました(詳しい流れを知りたい方はついったーの過去ログをどうぞ)。
にしても、今回の話、世界陸上見ていないと、よくわからないかもしれません(;´▽`)
で、とにかく、「三題噺」から↓なことになって、

世界陸上見てるんだけど面白くない小田裕二に飽きてなにかよからぬことをはじめてしまう○○。
(↑私が考えたわけではありませんw)

これが面白そうで、上のような文章が出来上がりました。
本当はストレートにエロにしようかと思ったんですが、やめましたw
ブログにアップしたほうが手間もかからないので、ブログ用に控えめな感じで。
最近、エロ書いていないんで、書こうか迷ったんですがw
エロ待って下さっている方がいましたら、すみません。
そのうち、サイトの方にそういう話がアップされると思うのでしばらくお待ち下さい。

しかし、今回はテンションの低い世界陸上で面白さが半減ですw
前回の世界陸上、テンション高くてうざい!うざいよ!と言っていたことを謝りたいですw
もうちょっとテンション上げていって欲しいなあw

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