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よくある話-吸血鬼編-その2
[No.354] 2008-10-13 Mon 19:45
吸血鬼の続き。
前回分はココ


「愛理、いいよ」

桃子が立ち上がり、赤く染まった手首を愛理に差し出した。
愛理は傷口に口を付ける。
生温かい血液が唇を濡らし、口の中に桃子の血の味が広がる。
赤茶けた鉄の味はしない。
桃子には人間の血と変わらないと言われるが、人間の血より遙かに甘く感じる。
愛理は流れ出る血を舐め取っていく。

桃子から血を分けてもらう時は、こうして切った手首から流れ出る血を飲む。
人間から血を吸う時とは違い、肌に直接歯を立てるようなことはしない。
桃子が人間のように血を吸われるのは嫌だと言ったからだ。
だが、こういった方法で血をもらうことに違和感はない。
こうして血を飲んでいると、自分は桃子に生かされているのだと強く意識する。

桃子の腕を握りしめる。
飲みきれなかった血が流れて愛理の手を汚す。
目の端に赤く染まった指先が映る。
桃子から溢れ出した血が空腹だった愛理を満たしていく。

もっと欲しい。
傷口に強く唇を押しつけると肩を叩かれた。

「愛理。ちょっと、愛理てばっ!」

桃子が不機嫌な声で言った。

「もう、おしまい」

桃子の腕を掴んでいた愛理の手は、強引に引き剥がされる。
手首の傷を桃子が手で覆い隠した。

「……まだ飲みたい」
「飲み過ぎだって。あんまり飲んだら、ももが干からびちゃう」

桃子が傷口を一度ぐっと掴んで離す。
手首から傷は消えていた。

「愛理、血ついてる」

傷があった方の手が伸びてくる。
桃子が愛理の血の付いた手を握り、口元へと引き寄せた。
指先についた血は綺麗に舐め取られる。

赤い汚れが落ちた後、胸元を掴まれる。
服を引っ張られ何事かと桃子を見上げると、唇についた血を舐められた。
さっき飲んだ血よりも温かい舌先に、愛理は桃子の手を握りしめた。

「変な味だなあ。……自分の血って美味しくない」

ため息混じりに桃子が言った。

「美味しいよ、ももの血」
「人間の血のほうがいいよ」
「まずいもん」

桃子の手をさらにきつく握る。
だが、手は握りかえされない。

「好き嫌いはだめだよ、愛理」

手を振りほどき、桃子が愛理の肩を軽く叩いた。

「愛理、牛乳好きでしょ。この際、人間の血を牛乳に混ぜて飲んだら?見た目がいちごみるくっぽくて美味しそうじゃない?」

そう言って、桃子が愛理を見る。
愛理は首を横に振って答えた。

「飲み方はどんなでもいいからさ、ちゃんと食事しなよ。ももだって愛理のために食事してるわけじゃないんだから」

桃子が珍しく真面目な顔をして愛理を見る。
今まで桃子から何度も言われてきたことだったが、愛理は何度言われても「ちゃんとした食事」を取ろうとは思えない。
そんな食事を取るぐらいなら飢えて死んだ方がいい。

「わかったの?愛理」

問いかけられる。
だが、わかったとは言えない。

「返事は?」

返事を催促されて、愛理は答えるかわりに桃子の手首を舐めた。
すっかり傷口がふさがったそこから血が流れ出すことはない。
しかし、肌に残ったかすかな血が舌先を刺激する。

「もう、舐めないの」

桃子の呆れた声が聞こえて、愛理は顔を上げた。

初めて桃子から血をもらった日。
それはこの職に就くよりも遙か昔、愛理が空腹で倒れた時だった。
助けると言うよりは、気まぐれに桃子が自分の血を愛理に飲ませた。
その時からこの関係が始まった。

「今度は舞美からもらいなよ。血、多そうじゃん」
「もものがいい」
「舞美のだって同じだよ」
「舞美ちゃんのじゃだめ」

他の吸血鬼の血を欲しいとは思わない。
空腹の時、欲しいと思うのは桃子の血だけだ。

「誰でもいいと思うけどなあ」

理解出来ない、といった様子で桃子が肩をすくめた。

「他の人じゃだめなんだって。だって、あたしとももの秘密じゃん」

愛理に必要なものは桃子の血だが、それとは別にもう一つあった。
秘密を守ること。
それは愛理にとって大切なことだった。
桃子から秘密にしようと言われたわけでも、自分から言ったわけでもない。
そもそも、秘密にするようなことでもなかった。
だが、愛理は桃子から血を分けてもらっていることを誰にも言わなかったし、桃子も愛理に血を分けていることを誰にも言っていないようだった。

共有する秘密のようなもの。
長い間続いたそれを愛理の方から壊したくない。
そして、桃子の方からも壊して欲しくなかった。
出来ればずっと共有していたいと愛理は思う。

「じゃあ、愛理の血くれたら、もものあげる」

交換条件ね、と桃子が笑った。

「それって、意味ない。お互いの血が行ったり来たりしてるだけなんて、そんなのお腹いっぱいにならないよ。循環してるだけじゃん。馬鹿みたい」
「その馬鹿みたいなことしてるのが愛理」
「えー!」
「愛理が飲んでるももの血には、ももが人間から吸った血が混じってるんだよ?ももが人間から血を吸って、愛理がその血を吸って。循環してるわけじゃないけど、似たようなものでしょ」
「似てるけど違うからいいの。お腹一杯になるもん」

桃子の気まぐれがいつまで続くかはわからない。
長い時間こうしてきたが、この先も桃子が同じ関係を望むとは限らなかった。

もし桃子から血を貰えなくなったら、愛理に待っているのは飢え死にだ。
いつかそうなる日が来たら桃子は悲しんでくれるのだろうか。
血を分けてやればよかったと後悔するのだろうか。
愛理には想像も付かない。
長い間生きているわりに、わかることは少なかった。

「ももより若いんだから、先に死んじゃだめだよ。愛理」
「ももが生きててくれたら、あたしも死なない」
「それって、愛理を死なせない為には、ももが生きてないとだめってこと?」
「うん」
「そんなんじゃなくて。愛理は愛理でちゃんとしないと」

桃子が困ったように眉根を寄せる。
そして、子供をあやすように愛理の髪を柔らかく撫でた。

「……ももの血、また欲しい」

桃子が死んだらきっと生きていられないだろう。
身体の機能的に言えば、人間の血を飲むことも、他の吸血鬼の血を飲むことも出来る。
生きていくことは簡単だ。
血さえあれば生命は維持出来る。
桃子の血ではないという点に目を瞑ればそれでいい。

「気が向いたらね」
「そんなんじゃ、困る」
「なら、その辺にいる人間の血飲めばいいじゃん」

美味しくない人間の血。
飲みたいと思えない他の吸血鬼の血。
それでも、身体の中に入ってしまえば同じだ。
桃子もそう思っているに違いない。
だが、愛理には今さら桃子以外の血を飲んでまで生きていこうとは思えない。

「意地悪言わないでよ」

美味しくないものはいらない。
飲みたいと思うもの以外はいらない。
そう思う自分はもう吸血鬼ではないのだと愛理は思う。

「まったく、もう。ももはいつまで愛理に血をあげればいいわけ?」
「あたしが死ぬまで」

返事はない。
桃子がくるりと向きを変えて、愛理に背を向ける。

「もも、もう行くよ」
「待ってよ。一緒に帰る」

愛理が慌てて起ち上がると、桃子がにやりと笑った。

「一緒に来る?人間ハント」
「……それ、あたしが帰ってからにしてほしい」
「はいはい。ほんとに愛理は……。ももが優しいから生きていられるんだからね。そこんとこ、忘れないように」

桃子が愛理の手を取った。
そのまま手を引かれて楽屋を出る。

「長生きさせてよ」
「気が向いたらね」

命の期限は初めから決まっている。
桃子より長く生きることは出来ない。
愛理は桃子がいるから生きていられる。

愛理を変えたのは桃子の血だ。
だが、桃子に責任を取ってくれとは言えなかった。


END

---   ---   ---

忘れないうちに続きアップ。
こういう雰囲気の話が好きです。
ほのぼのした話とかコメディタッチの話もいいんですけどね(´▽`)

で、ももあいりとは話が変わっていしよし。
最近、いしよしコンビでの仕事が多いなあと思っていたら、ついに二人で曲だすんですね。
この前、℃と梨華ちゃんがファッションショーでモデルを務めたブランド。
あれのキャラクター名義みたいですけど。
とりあえず曲聞きましたが、カッコイイ。
好みの曲キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━!!
そして、画像見てワロタw
梨華様すぎですw
なんという℃S梨華ちゃん。
H&Aの設定、イイネw
よっすぃーの方の20%オス(だったかな)ってのはいらない気もするけどw
いかにも、という狙った画像もあってサービス良いですね。
あざとい感じがしますが、衣装とか髪型がすごいんであまりあざとさが気になりませんでしたw
私は梨華ちゃん絡みなら他のCPが好きでいしよしヲタじゃないんですが、今回のはいいなあと思いました。

こういうのももみやでもやって欲しいなあ。
Buono!も楽しいんだけど、二人でユニットとか。
……無理だろうなあ。
でも、見たいですw


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